2つのモデルから見る予実管理の正確性
最近、IPOにおける予実管理の重要性が増しているという話を耳にしました。
上場審査において、予実にズレが発生してしまうのは管理不足とみなされ、当然是正が求められます。
(もちろん完璧に予実を一致させるのは不可能ですが、かなりの精度が求められます。)
うちでは会計周りを見ているのが僕しかいないので、当然予実管理も僕の仕事なのですが、予算と実績のズレというのはやはり発生してしまいます。
では何が原因で予実のズレが起こってしまうのか。
今回は「売上の性質」という面から考えてみようと思います。
「売上の性質」とは
「売上の性質」という言葉が正しいのかわかりませんが、例えば売上には
- ストック売上:サブスクのように月々決まった金額の売上
- イニシャル売上:一回限りの売上
という区分けがあります。
ストック売上は、いわゆるチャリンチャリン系(ちゃりんちゃりんとお金が入ってくる様子から)で、サービスの提供を持続的に行うことで、その契約が続く限り、決まった金額を受け取るモデルです。
(従量課金の場合も多いですけど。)
対してイニシャル売上は、例えば開発受託などが当てはまり、期間に対してではなく、サービスそのものに対しての対価を受け取るモデルです。
音楽でいえば、
- Apple Musicがストック
- CDがイニシャル
と考えたらわかりやすいかもしれません。
今回、予実管理の正確性という論点で比較したいのは、
- 受託開発
- 自社プロダクトの販売
のふたつです。
※僕はIT企業でしか経理の経験がないので、今回は開発系の話に限定します
どちらの方が予算を立てやすいのか
結論から言えば、自社プロダクトの方が売上、利益の予算が立てやすいです。
正確に言えば、「予算を立てるロジックが組みやすい」と言えます。
(特にストックモデルの場合は。)
それぞれの特徴として、
●自社プロダクト
- 1件当たりの売上額は固定
- 過去実績から今後の予測が立てやすい
- 基本的に販売、契約時に売上として計上される
●受託開発
- 1件当たりの売上額がバラバラ
- 前に実績があったからと言って、それと同じ依頼は来ない
- 検収時期が読みにくい(売上がたつ月がわからない)
等があります。
案件ごとに売上高が違い、いつ売上が立つかもわからず、予測も立てにくい受託開発より、自社プロダクトの方が予算がたてやすいのは当たり前ですね。
IPOに有利なのはどっち?
前提として、受託開発しかやっていないから上場することはできないのか?と問われれば、答えは「NO」です。
しかし、IPO審査において予実管理が重視されることを考えれば、自社プロダクトメインの会社の方が審査に通りやすいというのもまた事実です。
上場準備段階から、実績が予算から5%ズレるだけで物言いがつくことを考えれば、
自社プロダクト(ストック)の販売というモデルが、IPOには有利なのではと思います。